クッシング症候群とは
クッシング症候群とは、副腎皮質からコルチゾールというホルモンが過剰に分泌される病気です。通常は、下垂体からACTHというホルモンが分泌され、これが副腎皮質を刺激してコルチゾールが分泌されるという仕組みになっています。そのためクッシング症候群は、副腎にコルチゾールを過剰に作る腫瘍ができるACTH非依存性クッシング症候群と、下垂体もしくは下垂体以外にACTHを過剰に作る腫瘍ができるACTH依存性症候群に分類されます。
別の分類として、外見の変化を伴うクッシング症候群を、顕性クッシング症候群、外見の変化を伴わないクッシング症候群のことを、サブクリニカルクッシング症候群と言います。
クッシング症候群の症状・合併症
クッシング症候群の検査
まず採血でACTHとコルチゾールを検査します。当院はアキュラシード®という機械を導入しており、ACTHとコルチゾールの採血結果が10分で判明します。クリニックレベルでこれらの検査結果が即日出てくるところは少ないと思います。
ACTH非依存性クッシング症候群が疑われる場合は、1mgデキサメサゾン抑制試験を行います。これは前日23時〜24時頃にデカドロンという薬を内服し、翌日午前に安静採血を受けるものです。コルチゾールの過剰分泌が証明されれば、副腎CT検査を行い、副腎腫瘍が存在することを確認します。アドステロールシンチグラフィという、放射性医薬品を投与して行う画像検査を追加することがあります。
ACTH依存性クッシング症候群が疑われる場合は、0.5mgデキサメサゾン抑制試験を行います。これでACTH(とコルチゾール)の過剰分泌が証明されれば、8mgデキサメサゾン抑制試験やCRH負荷試験、下垂体MRI検査を行い、ACTHを過剰分泌している場所が下垂体かそれ以外かを判定します。ここまでの検査で下垂体がACTHを過剰分泌しているという確証が得られなければ、追加の検査に進みます。
当院では各種負荷試験までは行えますが、画像検査(副腎CT、アドステロールシンチグラフィ、下垂体MRI)については、近隣の病院で検査を行なって頂くことになります。
クッシング症候群の治療
顕性クッシング症候群の場合は、原因となる腫瘍を取り除く手術を行います。
サブクリニカルクッシング症候群の場合は、コルチゾールの過剰分泌の程度と、その代謝合併症(高血圧、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症)の程度、原因となる腫瘍の性状によって、手術を行うか経過観察するかを決めます。
治療介入を行う場合、手術療法が原則ですが、一部の症例で薬物療法を選択することがあります。クッシング症候群に対して手術をすると、術後に一過性に副腎皮質機能低下症となることが多く、副腎皮質機能低下症が回復するまでステロイドの補充療法が必要です
終わりに
私は横浜労災病院という、副腎疾患の診療において日本で有数の病院で、副腎疾患外来を勤めておりました。副腎腫瘍によるクッシング症候群の場合、副腎手術の経験が豊富な横浜労災病院 泌尿器科への紹介も可能です。また、術後のフォローアップは当院で行うことができます。副腎皮質機能低下症からの回復は、採血でACTHやコルチゾールの値を測定することで確認しますが、当院では先述の通り、ACTHとコルチゾールの検査結果が10分で出てくるため、診療の体制としては十分と考えます。クッシング症候群が心配な方は、是非当院の受診をご検討下さい。