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副腎皮質機能低下症(副腎不全)

副腎皮質機能低下症とは

副腎皮質からは主にコルチゾール、アルドステロン、副腎アンドロゲンという3種類のホルモンが作られています(本当はもっとたくさんの種類のホルモンを作っているのですが、メインで働いているのはこの3種類で、これらについて考えます)。何らかの理由で副腎皮質ホルモンが十分に作れなくなることを、副腎皮質機能低下症(副腎不全)と言います。

副腎皮質ホルモンの欠乏による症状

副腎皮質ホルモンが欠乏することによる症状は、下記の通りです。

コルチゾール

  • 倦怠感
  • 脱力感
  • 消化器症状(食欲不振、悪心・嘔吐、下痢など)
  • 体重減少
  • 血圧低下
  • 精神症状(無気力、嗜眠)
  • 発熱
  • 関節痛

アルドステロン

  • 血圧低下
  • 塩分渇望

副腎アンドロゲン

  • 女性において腋毛、恥毛の脱落

我が国においては塩分摂取量が多いこともあり、アルドステロンの欠乏があってもホルモン補充療法を要さないことが多いです。
そうなると、問題を引き起こすのはほとんどコルチゾールの欠乏であるため、コルチゾールの欠乏の有無に焦点が当てられます。

副腎皮質機能低下症と
副腎疲労症候群は全く別の疾患

副腎皮質機能低下症と紛らわしいものとして、副腎疲労症候群という概念がありますが、前述のような副腎不全症状を、問診をベースに評価して診断されるもので、この中には実際に副腎皮質ホルモンが欠乏していないものも含まれます。コルチゾールの欠乏がない状態でコルチゾールの補充療法を長期行うと、高血圧・糖尿病・脂質異常症・骨粗鬆症を引き起こし、有害となり得ます。
従って、副腎皮質機能低下症(副腎不全症)と副腎疲労症候群は明確に区別されるべきです。

副腎皮質機能低下症の分類

副腎皮質ホルモンは、視床下部からCRHが分泌され、これが下垂体に作用してACTHが分泌され、これが副腎に作用して副腎皮質ホルモンが分泌される、というメカニズムになっています。
従って、副腎不全の分類としては、視床下部もしくは下垂体が障害される「中枢性副腎皮質機能低下症」と、副腎が障害される「原発性副腎皮質機能低下症」に分けられます。

副腎皮質機能低下症の検査

ACTHとコルチゾールというホルモンを測定します。当クリニックはアキュラシード®という機械を導入しており、ACTHとコルチゾールの採血結果が10分で判明します。クリニックレベルでこれらの検査結果が即日出てくるところは少ないと思います。
これらのホルモンは朝に分泌が増えて、その後減っていくというパターンをとるので、正確な評価のためには朝の採血が望ましいです。
一方でストレスなどによっても制御されているので、1回の採血で副腎不全症と言い切ることは難しいことが多いです。従って副腎皮質機能低下症と診断するには、以下のような負荷試験が必要です。

1)ACTH負荷試験

安静になった後採血を行い、ACTHを注射して、その後30分後、60分後に採血を行います。
ACTHによって体が熱くなる感じがでてくることがあります。

2)CRH負荷試験

安静になった後採血を行い、CRHを注射して、その後規定の時間後に採血を行います。

3)インスリン低血糖試験

安静になった後採血を行い、インスリン注射を行い、その後規定の時間後に採血を行います。
低血糖症状(手の震え、冷や汗、頭痛)が起こります。ひどいと痙攣や意識障害を起こすことがあります。危険であるため当クリニックでは行いません。

副腎皮質機能低下症があるかどうかを判断するには、ACTH負荷試験のみで十分であることが多いです。残りの検査は主に、障害部位が中枢か副腎かを見るために行われます。
インスリン低血糖試験以外は、比較的検査は簡便であり、採血以外の苦痛は少ないです。
当クリニックでは安静採血や負荷試験のための専用の部屋を設けています。

副腎皮質機能低下症の治療

副腎皮質ホルモンを飲み薬で補充します。コルチゾールの欠乏が顕著な方では、補充により症状が劇的に改善することが多いです。
ストレス下(発熱、下痢・嘔吐、手術など)では、薬の量を増やす必要があります。患者さんの状態によって指導させて頂きます。

終わりに

副腎皮質機能低下症は、頻度としてはそれほど多くはないものの、症状が多彩で、ホルモン検査も解釈が難しいです。一般の内科を受診して、ホルモン検査を受けても、よく分からないと言われてしまうこともあります。私は横浜労災病院という、副腎疾患の診療において日本で有数の病院で、副腎疾患外来を勤めておりました。副腎皮質機能低下症が心配という場合は、当院の受診をお勧めします。仮に副腎皮質機能低下症でなかったとしても、倦怠感を起こしうる内分泌疾患は多く、当クリニックでは他の疾患の可能性も含めて検討させて頂きます。