インスリンポンプとは
インスリンポンプとは、インスリンを持続的に注入してくれるポンプのことです。
1型糖尿病や膵性糖尿病の方など、インスリン分泌が極めて低下している方は、従来のペン型インスリンの頻回注射の治療だと、良好な血糖コントロールを達成するためには注射回数が多く負担になったり、そもそも良好な血糖コントロールを達成するのが困難である場合があります((1型糖尿病の治療の項)も参照ください)。インスリンポンプは注射負担の改善や、良好な血糖コントロール達成に役立ちます。
当院で取り扱いのある
インスリンポンプ
当院ではメディセーフウィズスマート®というポンプと、ミニメド780G®というポンプの取り扱いがあります。
共通する長所
- 穿刺の痛みはポンプの機器の交換時のみ。
交換の頻度は2~3日に1回。 - 24時間にわたって、ベーサルインスリン(基礎インスリン)の量を調整できる
- 運動や脂質の多い食事に備えて、一時的にベーサルインスリンの量を増減させることができる
- ボーラスインスリン(食事や補正のために都度注入するインスリン)の注入方法が多彩
- 糖質インスリン比やインスリン効果値、目標血糖値、残存インスリン時間を設定することで、食事や補正に必要なボーラスインスリン量を計算してくれる他、前回投与したボーラスインスリンがどれぐらい残存しているかを計算してその分を割り引いて計算してくれる
共通する短所
- 費用が高い
最大の欠点です。以下に表を示します(3割負担の方を想定しています。再診料や薬代、検査代などが別途かかります)。インスリン分泌の極めて低下した方の中には、障害年金を受給対象となる方もいらっしゃいますので、その場合は負担は軽減されると考えます。
- ポンプトラブルによって、インスリンの注入が止まり、糖尿病性ケトアシドーシスになるリスクがある
このため、インスリンポンプを使用していても、ペン型インスリンの携帯が必要です。
メディセーフウィズスマート®と
ミニメド780G®のポンプの
特徴や差異
メディセーフウィズスマート®
チューブレスの、直接腹部などに留置する、パッチ式ポンプと呼ばれるものです。インスリンの注入には、付属のリモコンを使用します。
長所
なんといってもチューブレスなので、服装を選ばず、動きやすいので、女性やスポーツをよくする方に好まれます。またポンプの交換の手順が、リモコンに動画として表示されるので、使い方を習得しやすいです。
短所
ポンプと皮膚の接触面が少し大きく、皮膚トラブルがやや多いです。また、やや注入不良が多いです。また、持続血糖測定器と連動してインスリンを自動調整してくれる機能はありません。
ミニメド780G
チューブがあるインスリンポンプです。インスリンの注入には、ポンプ本体を操作します。
長所
注入不良が比較的起きにくいです。また、専用の持続血糖測定器(ガーディアンセンサー)と連動させることで、AHCL(血糖に応じて適切な量のインスリンを自動で注入してくれる機能のこと)にできます。ただしAHCLの場合も食事に対するボーラスインスリンの注入は原則必要です。
短所
チューブがあり、服装や激しい運動などに制限がかかります。
終わりに
私は過去延べ15人のインスリンポンプで治療している患者さんを直接担当した経験があります(後進の指導などで関わった症例を含めると更に多いです)。インスリンポンプの導入や切り替え、AHCLの症例、1型糖尿病合併妊娠の症例など、様々なシチュエーションに関わっています。全国的にそこまでインスリンポンプが普及していない状況の中で、まずまずの経験を持っているのではないかと考えています。
当院は糖尿病の専門クリニックとして、インスリンポンプを含めた幅広い治療選択肢をご提案させて頂くことができます。インスリンポンプにご興味がある方は、是非当院の受診をご検討下さい。