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原発性アルドステロン症

原発性アルドステロン症とは

原発性アルドステロン症は、副腎からアルドステロンというホルモンが過剰に分泌される病気です。アルドステロンは血圧を上げたりカリウムというミネラルを排泄する作用があるので、原発性アルドステロン症になると高血圧や低カリウム血症となります。見慣れない名前だと思うかもしれませんが、実は高血圧の患者さんの10%程度に原発性アルドステロン症があると言われています。原発性アルドステロン症としての治療をされずに、高血圧のみ治療されると、十分に血圧をコントロールされても、動脈硬化や腎機能低下といった合併症が進みやすいことが知られています。従って、高血圧の背景として、原発性アルドステロン症を見逃さないことが重要です。

高血圧

どんな人が検査を受けるべきか?

原発性アルドステロン症診療ガイドライン2021によると、理想的には高血圧と診断された方全員が、原発性アルドステロン症かどうかのチェックを受けた方が良いと言われています。ただし、高血圧は一般の内科で診療されることも多く、全員チェックを受けるのは難しいようです。

特に以下のような状況の方は、
チェックを受けるべきだと
言われています

  • 低カリウム血症のある方
    (高血圧の有無に関わらず)
  • 3種類以上の高血圧を内服しているが、
    血圧が目標値まで下がってこない方
  • 40歳未満で高血圧と診断された方
  • 未治療時の血圧が150/100mmHg以上の方
  • 若年で脳卒中となった方
  • 睡眠時無呼吸症候群のある方
  • 副腎腫瘍がある方
  • 妊娠を希望していて、血圧が高めの方

診断の流れ

1採血

まずレニンとアルドステロンというホルモンを採血で検査します。当クリニックはアキュラシード®という機械を導入しており、レニンとアルドステロンの採血結果が30〜45分で判明します。レニンとアルドステロンは総合病院でも外注検査となっていることが多く、迅速で結果が出てくる病院やクリニックは少ないと思われます。必要に応じて安静採血を行います。

2負荷試験

基準を満たした方(=原発性アルドステロン症が疑わしい方)は、負荷試験に進みます。負荷試験にはカプトプリル負荷試験、立位フロセミド負荷試験、生理食塩水負荷試験、経口食塩負荷試験等がありますが、一つでも負荷試験で基準を満たせば原発性アルドステロン症の診断となります。当院ではカプトプリル負荷試験と経口食塩負荷試験のみ行っています(立位フロセミド負荷試験は脱水によるふらつき・意識消失などのリスクがあるため、生理食塩水負荷試験は4時間の点滴が必要であるため行っていません)。

カプトプリル負荷試験

カプトプリル負荷試験は、安静になった後、採血を行い、カプトプリル(降圧薬としても用いられる薬です)を内服し、規定の時間の後再度採血を行います。カプトプリルにより、血圧が下がりすぎてしまうことや、血管浮腫(口の中や喉などが腫れるもの、重篤化すると呼吸困難になることがあります)が、極めて稀です。経口食塩負荷試験は、3日間以上、1日10g以上の塩分摂取を行なった上で、1日尿を貯める検査です。蓄尿容器は当院でお渡しします。

病型分類の流れ

副腎は2つ(左右一つずつ)存在しますが、原発性アルドステロン症には、片側の副腎にアルドステロンを分泌する腫瘍が存在する(=アルドステロン産生腫瘍)パターンと、両側の副腎が全体的にアルドステロンを分泌しているパターン(特発性アルドステロン症)の2つのパターンに大別されます(実際はもっと複雑です。例えばアルドステロン産生腫瘍と、特発性アルドステロン症が合併していることもあります)。
前者の場合、腫瘍のある方の副腎を手術すれば、原発性アルドステロン症が完治することが期待できます。
後者の場合、両方の副腎を切除すると、副腎不全状態となってしまい、生存のために副腎皮質ホルモンの飲み薬を一生続けないといけなくなってしまい、デメリットの方が大きくなるので、アルドステロンの作用を抑える飲み薬で治療していくことになります(前者の場合で手術を希望しない場合も同様です)。
そのため、原発性アルドステロン症の手術治療を検討したい場合、どちらの副腎がアルドステロンを過剰に分泌しているのか、もしくは両方の副腎がアルドステロンを過剰に分泌しているか(=局在診断)を明らかにする必要があります。
CTなどの画像検査で副腎腫瘍が映っても、その腫瘍がアルドステロンを過剰に分泌しているとは限らず、画像検査で見えないような微小な副腎腫瘍がアルドステロンを過剰に分泌していることがあります。局在診断のためには、副腎静脈サンプリングというカテーテルの検査が必要ですが、この検査の手技は難易度が高いと言われており、特に右副腎静脈へのカテーテルの挿入に失敗されていることが多く見られます。
当院で原発性アルドステロン症の診断となった方で、副腎静脈サンプリングの適応があると思われる方は、副腎静脈サンプリングにおいて日本で有数である、横浜労災病院 内分泌・糖尿病センターに紹介させて頂くことが可能です。

終わりに

私は横浜労災病院という、原発性アルドステロン症の診療において日本で有数の病院で、副腎疾患外来を勤めておりました。そのため、原発性アルドステロン症において質の保たれた医療を提供できるだけでなく、必要な症例において、横浜労災病院 内分泌・糖尿病センターに紹介させて頂くことも可能です。クリニックレベルにおいて必要な診療体制は整えたものと自負しており、原発性アルドステロン症が心配な方は、是非当院の受診をご検討下さい。