1型糖尿病の方へ
1型糖尿病の方は、インスリンという、血糖を下げるホルモンがほとんど出なくなっています。インスリンが出ないと、血糖が極めて高くなるだけでなく、インスリン注射がないと生存もできません。このため、1型糖尿病の治療は原則インスリン注射となります。
※一部にインスリン分泌が比較的保たれた緩徐進行1型糖尿病の方がいて、その場合は2型糖尿病に準じた治療が行われることもあります。また、他のタイプの糖尿病の方でも、インスリンがほとんど出なくなって、1型糖尿病に準じた治療が行われることがあります。
インスリン量の調節方法
健康な方のインスリン分泌には、基礎分泌(食事を摂っていないときの血糖値を一定にするもの)と追加分泌(食後の血糖上昇を抑えるもの)があります。例えば食事をたくさん摂れば、追加分泌が増えて、血糖値があまり上がらないような仕組みになっています。1型糖尿病の方は、この基礎分泌を持効型インスリンで、追加分泌を超速効型インスリンで補充します。注射するインスリン量を調節する方法を習得すると、より良い血糖コントロールに繋がります。インスリン量の調節方法として、カーボカウントと、補正インスリンとがあり、これらについて説明していきます。
①カーボカウント
日々の生活の中で、血糖の動きを決める非常に大きな要素は食事です。食事の中で、血糖の動きを決める要素の大半を占めるのは糖質量です。
このため、食事に対するインスリン注射のやり方には、以下の二通りのやり方があります。
1)基礎カーボカウント
食事中の糖質量を一定にして、一定の量の超速効型インスリンを注射する。
2)応用カーボカウント
食事中の糖質量を見積もって、注射する超速効型インスリンの量を調節する(=食事に合わせてインスリン量を調節する)。この場合、糖質インスリン比(1単位のインスリンで何gの糖質を処理できるか)の量を医師が設定します。
(食事中の糖質量)÷(糖質インスリン比)が、食事に対して必要なインスリンです。
どちらにしても、食事の糖質量に関してある程度理解する必要があります。糖質量を見積もるなんて難しいと思われるかもしれませんが、簡易的に見積もる方法もあります。
②補正インスリン
食事以外にも血糖の動きを左右する要素は色々あります。同じ食事に対して同じ種類・量のインスリンを注射しても、血糖の動きは毎回異なります。血糖が想定外に高くなってしまったとき、超速効型インスリンの作用が切れてしまっていると、血糖は高いまま下がってきません。このため血糖が高い場合は、目標とする血糖になるよう補正するインスリンが必要であり、超速効型インスリンを用いて補正します。この場合、インスリン効果値(1単位のインスリンで何mg/dL血糖が下がるか)の量を医師が設定します。
(現在の血糖値-目標血糖値)÷(インスリン効果値)が、補正に必要なインスリンです。
補正は毎食前(+人によっては眠前)のタイミングで行います。他のタイミングでも補正をしても問題ありませんが、前回注射した超速効型インスリンの効果が残存している場合は、それと相まって低血糖を起こしてしまう可能性があり、注意が必要です。
治療の補助となるアプリやデバイス
近年アプリやデバイスの進歩が目覚ましく、治療に役立てることができます。ここではアプリ、持続血糖測定器(CGM)、インスリンポンプについて紹介していきます。
①アプリ
ここまでの説明で、計算が大変だなと思われた方もいらっしゃると思います。スマートe-SMBGというアプリや、カーボカウントというアプリを用いると、糖質量や現在の血糖値を入力すると、必要なインスリン量を計算してくれます。
②持続血糖測定器(CGM)
フリースタイルリブレ2のセンサー、
フリースタイルリブレLinkのアプリ
フリースタイルリブレ2の
専用リーダー
Dexcom G7アプリ、G7のセンサー
良好な血糖コントロールのためには、糖質インスリン比の設定や、糖質量の見積もりを大きく外していないか、想定外の血糖になっていないかなどの確認のため、頻回の血糖測定を必要とします。従来のSMBG機器では、測定したタイミングでの血糖しか分からず、頻回に測定しようとすると指先の穿刺の痛みが負担になります。持続血糖測定器を用いると、1日を通しての血糖の推移をグラフにして見ることができ、高血糖や低血糖を知らせるアラートを鳴らすことができ、穿刺の痛みは留置のタイミングだけです。詳しくは血糖測定機器の項をご参照ください。
③インスリンポンプ
メディセーフウィズスマート®
ミニメド780G
良好な血糖コントロールのためには、食事や補正のために頻回のインスリン注射が必要です。従来のペン型インスリンでこれを行うと、注射の痛みが負担になります。
また、一般的な睡眠リズムの方は、午前3時頃から血糖を上げるホルモンの分泌が増えて血糖が上がってきます。他、食事中の脂質やたんぱく質は血糖を緩やかに上昇させますし、運動すると血糖が下がりやすい状態が持続します。これらに対してペン型インスリンで対応するのは困難なことがあります。
インスリンポンプを使用すると、注射の痛みは留置のタイミングのみで、基礎インスリンの量を24時間にわたって細かく調整することができ、またこれから運動や脂質量が多いものを食べるときなどに、一時的に基礎インスリンの量を減量/増量させることもできます。中には、持続血糖測定器と連動して、インスリンを自動で調整してくれる機能を持つものもあります。詳しくはインスリンポンプの項をご参照ください。
当院では糖尿病の専門のクリニックとして、それぞれの患者さんにあったやり方をご提案させて頂くことができます。
1型糖尿病の専門治療にご興味がある方は是非当院の受診をご検討下さい。